宇宙英雄ローダンシリーズ
３１１〜３２０

　”それ”と”反それ”が戦わす宇宙のチェスは最終局面を迎える。”反それ”の道具となったコル・ミモことマルコル・デ・ラパルは、ローダンの脳を移送容器に移しどことも知れぬ場所へ転送する。ローダンの肉体は代わりの脳に支配され、アンドロイド・ローダンとなる。(2005.5.13)
　脳移植が日常的に行われるナウパウム銀河で帰還手段を模索するローダンはナウパウム銀河の支配者レイチャの援助を取り付け、隣のカトロン銀河に遠征する。アンドロイド・ローダンは正体を暴かれ、ローダンの肉体は脳を持たないまま保存される。(2006.2.12)

ローダンなもの

　３１０巻の最後に載っている３１１巻から３２５巻までの仮題。

　621「時間改変者」Ｈ・Ｇ・エーヴェルス
　622「捕らわれた脳」ハンス・クナイフェル
　623「脳マーケット」ウィリアム・フォルツ
　624「ノパロールの地下霊廟」クラーク・ダールトン
　625「ゼロ時間の橋」Ｈ・Ｇ・フランシス
　626「脳の戦い」クルト・マール
　627「マクツァドシュの地獄」エルンスト・ヴルチェク
　628「サイナック・ハンター」ウィリアム・フォルツ
　629「サイナックとの決闘」Ｈ・Ｇ・エーヴェルス
　630「ユーロクの遺産」クラーク・ダールトン
　631「飛行都市」ハンス・クナイフェル
　632「無限からの警告」Ｈ・Ｇ・フランシス
　633「プシオン狩」クルト・マール
　634「ムクトン＝ユルの反乱」Ｈ・Ｇ・エーヴェルス
　635「石の脳」ウィリアム・フォルツ
　636「ライチャの死」Ｈ・Ｇ・フランシス
　637「カトロンの異人」ハンス・クナイフェル
　638「対抗策」エルンスト・ヴルチェク
　639「大執政官の死」クルト・マール
　640「狂った脳」ウィリアム・フォルツ
　641「幽霊ごっこ」Ｈ・Ｇ・エーヴェルス
　642「自殺艦隊」Ｈ・Ｇ・フランシス
　643「しずかな監視者の惑星」エルンスト・ヴルチェク
　644「過去から来たゴリアテ」ハンス・クナイフェル
　645「カトロン結合」クルト・マール
　646「永遠とのコンタクト」ウィリアム・フォルツ
　647「パインテクの陰謀」Ｈ・Ｇ・エーヴェルス
　648「ユーロクとの戦い」クラーク・ダールトン
　649「闇の中のチェス」クルト・マール
　650「七者同盟」ウィリアム・フォルツ

３１１巻「盗まれた脳」

amazon.co.jp

・時間改変　Ｈ・Ｇ・エーヴェルス 　惑星Ｄ＝ムナーであらためて争う二人のローダン。ローダンは未来からの情報をもとに”それ”と”反それ”がチェスのような戦いを行っていることを知る。 　未来から来た一行は存在を続け、≪マルコ・ポーロ≫にいたアラスカとコスムは消える。するとゼロ時間デフォルメーターはどこにあれば良いか。このへんはあまりに神秘的で、つじつまを合わせる理屈を考える気にならない。 ・盗まれた脳　ハンス・クナイフェル 　コル・ミモは実はゼロ時間デフォルメーターの設計者の息子、マルコル・デ・ラパルだった。ＰＡＤ病駆逐のためやむを得ずローダンの側に立っていたラパルだが、”反それ”の手先となって、ローダンを拘束。ローダンの脳を”反それ”が提供した脳と入れ替える。 　ローダンの脳は、移送容器に収められ、はるかな目的地へと転送されてしまう。 　脳が殺されないのは、神秘な銀河チェスのルールに沿うことなのであろう。それで、表紙のローダンはどちらがどちら？(2005.5.13)

３１２巻「ノパロールの地下霊廟」

amazon.co.jp

・脳マーケット　ウィリアム・フォルツ 　肉体を持たない脳が取引される世界にローダンはいた。ここでは、脳が肉体よりも速く衰えるため、脳を補充・交換すべく、脳が取引されているという。 　ローダンは、自分が特殊な才能を持つことをアピールし、首尾良くパラ転送移植の権威ドインシュトに買い取られ、新たな肉体を得た。自由と情報を求めてドインシュトのもとから脱走するローダン。 　肉体が有り余る世界に、どうして脳だけが大量に取り残されているのか。ナウパウム銀河の文化はなかなか難解だ。 ・ノパロールの地下霊廟　クラーク・ダールトン 　ローダンが目指すのは宇宙観測センター。もちろん自分の銀河を探すためだ。闇商人赤いアナトムの歓心を買ったローダンは、宇宙観測センターに侵入した。しかし、脱出は困難を極める。再びドインシュトに保護されたローダン。ある程度ドインシュトに自分のおかれた状況を納得してもらえたようだ。(2005.6.25)

３１３巻「ゼロ時間の橋」
amazon.co.jp	・ゼロ時間の橋　Ｈ・Ｇ・フランシス 　細胞活性装置を取引材料にドインシュトの支援を得たローダンは、脳移植の技術を使って自分の肉体と通信を試みる。地球では、ローダンの正体に気付いているものはいない。接触は短時間で終わる。 　ドインシュトを脅迫する臓器ブローカー、ハクチュイテンを逆に罠にかけ、ローダンはハクチュイテンの肉体を手に入れる。 　地球との通信では”反それ”が露骨な介入。 ・ヘルタモシュ誘拐計画　クルト・マール 　ハクチュイテンと赤いアナトムが計画していたナウパウム銀河要人ヘルタモシュの誘拐計画。ローダンはヘルタモシュを救出して、援助を求める。(2005.7.12)

３１４巻「マクツァドシュの地獄」

amazon.co.jp

・マクツァドシュの地獄　エルンスト・ヴルチェク 　ハクチュイテンの肉体に宿るローダンを援助するため、ヘルタモシュはローダンをナウパウム・レイチャトの支配者レイチャに会わせようと中心惑星レイトに着陸する。しかし、悪名高いハクチュイテンを援助することでヘルタモシュは政治的スキャンダルの種を抱える。 　ヘルタモシュに敵対する政治勢力に襲われたローダンは宇宙船を脱出し、巨大都市マクツァドシュにまぎれこもうとする。そこは過剰な人口を抱えた混沌世界だった。 ・サイナック・ハンター　ウィリアム・フォルツ 　ヤアンツァルから消息を絶ったローダンの脳を追跡・抹殺すべく、太古種族の生き残り、ユーロクのトリトレーアが覚醒する。トリトレーアはローダンの痕跡をたくみにたどり、ローダンが新たな肉体を得るためふたたびヤアンツァルに戻ることを確信した。 　まあ、一番わからないのはサイナック犯罪とは何かということ。この巻あたりからは違法な脳移植ということのようだが、それ以前は異銀河からの脳だったと記憶している。話の運びとしては、異銀河から脳が来るなんてことは無いようになってしまっている。で、仮に違法な脳移植だとすると、サイナック・ハンターの位置づけがいくらか大げさな感じになる。(2006.1.22)

３１５巻「秘密臓器コマンド出動！」

amazon.co.jp

・秘密臓器コマンド出動！　Ｈ・Ｇ・エーヴェルス 　ヘルタモシュはサイナック・ハンターの出動を論理的に推測する。新たな肉体を必要とするローダンは、ヤアンツァルに戻り脳移植を受けなくてはならない。サイナック・ハンターの裏を書くべく、複雑な陽動作戦が展開される。 　ヘルタモシュは１１３頁で隣接銀河に関わる記憶を呼び起こす。それによると、ナウパウムの技術で隣接銀河に行けるはずだが、この先の展開とはうまく一致しない。 ・ユーロクの遺産　クラーク・ダールトン 　トラシュティンの肉体に宿ったローダンは、故郷銀河への手がかりを求めて、太古種族ユーロクの惑星を訪問する。トカゲ種族の銀河学者ガイト・コールとともに惑星トレーチャーに降りる。厚い雲に覆われた惑星に漂う飛行都市を探るうち、謎の相手から攻撃され、搭載艇を破壊されて二人は惑星に孤立する。 　廃墟には怪しい敵が潜むということが不思議なほど多いローダン世界。ところで、レイチャの年齢は１４８２歳だと１３頁に書いてあるが、今回の話で脳移植のＰＧＴ法は４００年前にはまだ確立していなかったことになる。４００年ではナウパウムの文化を理解しにくいのだが、レイチャの年齢についての理解はさらに難しい。前話の隣接銀河の話もそうだが、ローダンを読んでいて脳がトロけそうになるのはこんなとき。(2006.1.28)

３１６巻「無限からの警告」

amazon.co.jp

・飛行都市　ハンス・クナイフェル 　特に手がかりも無く伝説の都市ヌプレルを探すローダンとガイト・コール。ＰＧＴ障害者が手がかりとなってヌプレルを発見する。繰り広げられるＰＧＴ障害者との戦い。しかし、この戦いは誤解にもとづくものだった。ＰＧＴ障害者を率いていたアッカローリーのゼノが一行に加わる。 　遠方の銀河に関する情報を探るが、手がかりは得られない。ユーロクの自我集合体に襲われる一行だが、ローダンの抵抗により無事脱出した。 ・無限からの警告　Ｈ・Ｇ・フランシス 　ローダンを追跡するサイナック・ハンター、ユーロクのトリトレーアはヌプレルの罠からの連絡を受けトレーチャーに向かう。ローダンはしかし、トリトレーアの追跡を逃れ、トリトレーアはローダンが遠方の銀河に帰還したがっていることを推測する。 　ローダンは太陽系にメッセージを送るためヤアンツトロンに向かう。メッセージ送信のためヘルタモシュの秘密情報機関（ＶＡＳＧＡ）が秘密臓器コマンド（ＧＯＫ）と暗闘。 　ＰＧＴ法にもとづく脳移植は六次元重力定数のためヤアンツトロンでだけ可能であることがあかされる。これも３１１巻の記述とは違うみたいなんだが。(2006.1.28)

３１７巻「サイナック脳の謀略」
amazon.co.jp	・サイナック脳の謀略　クルト・マール 　ローダン追跡を続けるトリトレーア。ついに相手を追い詰め捕獲したと思ったその時、実は相手の罠にはまっていたことを知る。ローダンはトリトレーアと会談し、自分の立場をあきらかにする。 　ローダンとトリトレーア両者の間で複雑な作戦が展開。全体として破綻無くまとまっているところが良い。 ・ムクトン＝ユルの叛乱　Ｈ・Ｇ・エーヴェルス 　トリトレーアの行動に疑問を感じたチャトロは、もうひとりのサイナックハンター、ノクを覚醒させる。ノクとローダンの対決。”死せる者”トゥクストが介入。 　怪しい超能力を駆使する存在の介入で幻想的な展開に。それにしても、ノクがローダン抹殺と叛乱を平行実施する理由があるのか。(2006.2.8)

３１８巻「フルロックの聖域」

amazon.co.jp

・フルロックの聖域　ウィリアム・フォルツ 　トリトレーアから得た情報をもとに、一行は惑星ホルントルに到着。その荒れた惑星に発見したかつての世代船。 　ローダンは過去の種族ペルトゥスの脳を発見。”待つ者”を全員発見しろとの示唆を得る。 　今回の話で自分の不満が一気に出てきた。神官による支配構造。神官が水と食料の唯一の供給源として君臨しているが、神官側の支配の動機がわからない。普通は生産者の稼ぎを集積するために支配するが、ここでのように何も生産しない者を支配してなんの得があるのだろう。 　人口過剰なナウパウムに、どうしてこんなにたくさんの無人惑星があるのだろう。体力抜群の爬虫類系生命。爬虫類＝力持ちという構図はいかにもではあるが、爬虫類の筋力構造が哺乳類のそれを上回る理由が思い当たらない。 　ドライモンという人物が出るのはこの話。 ・レイチャの後継者　Ｈ・Ｇ・フランシス 　ナウパウムの支配者、レイチャであるオフパノカトが死を迎えた。後継者であるヘルタモシュが次のレイチャになるはずだったが、別の政治勢力がオフパノカトの遺言を偽造してヘルタモシュの地位が不安定に。政治的陰謀に立ち向かうローダン。(2006.2.12)

３１９巻「カトロンの異人」
amazon.co.jp	・カトロンの異人　ハンス・クナイフェル 　ヘルタモシュがレイチャの後継者としての指名を得たことと、その即位とはまた別の話だった。急進派のリーダーマイチェタンは民意を糾合してヘルタモシュのレイチャ即位をはばもうとする。人口過剰惑星レイトの住民を説得するため、ローダンは隣接銀河カトロンからの遠征部隊到着を演出する。 　住民が簡単に操られる背後には”反それ”の介入があるらしいが、それにしても状況変化が唐突。 ・対抗策　エルンスト・ヴルチェク 　日ごとに募るアンドロ・ローダンへの疑惑。”反それ”は状況打開のため大胆な作戦を演出。 　高次知性存在のやることにしては、単なる陽動の裏の本来の作戦というのは単純すぎないか。裏を書かれて驚く”それ”も情けないけど。

３２０巻「大執政官の死」
amazon.co.jp	・大執政官の死　クルト・マール 　ローダン側近のローダンに対する疑惑がついに決定的段階を迎える。最後の決め手はオラーナ・セストレ。アンドロ・ローダンはついに正体を暴かれ逃走するがアトランに脳を打ち抜かれる。 　折りよく作られていたロボット・ローダンが影武者を務めることに。 　”反それ”もアトランやワリンジャーに手の内を読まれるようでは情けない。 ・狂った脳　ウィリアム・フォルツ 　１億４百万光年の深遠を渡り遠征艦隊１１６隻がカトロン銀河に到着。ノクの残した資料から手がかりとなる殺人星系ヴラントンクをめざす。第４惑星で活動的なペルトゥス脳と対決。 　ガイト・コールの”夢の叔父”がいかにも唐突。”夢”に対するペトラクツ人の態度が理解不能というか、一貫性が無いような気がするが。お話としては良くできている方。(2006.2.12)