宇宙英雄ローダンシリーズ
１３１〜１４０

　テラ歴２４０４年４月、ローダンは太陽系帝国最大の戦艦≪クレストIII≫をもってアンドロメダ禁断ゾーンにいた。いまだに島の王たちはこの侵入者の正体を知らない。ローダンもまた島の王を求めている。アンドロアルファ星雲からは叛乱を起こしたマークスがアンドロメダ中枢部に戦闘艦隊を進めていた。(1999.10.15)
　偵察行でアンドロメダ中枢部に流れた≪クレストIII≫を襲うのは惑星ヴァリオの時間罠だ。≪クレストIII≫は５万年の過去へと転送されてしまう。ローダンはそこで島の王の基幹戦略を知るが、島の王もついにアンドロメダを荒らす敵がテラナーであることを知る。苦闘の末≪クレストIII≫は現在への帰還を果たし、併せて惑星ヴァリオを破壊して島の王に大損害を与える。だが、島の王によるテラへの直接攻撃が始まっていた。(1999.11.1)

ローダンなもの

１３１巻「悪夢のデュプリケーター」

　惑星ヒストリーの事件から、テフローダーは未知の巨大宇宙艦がアンドロメダ中枢部で偵察行動にあることを察知、これを罠に掛けようとする。あろうことか、グッキー、トロト、ノワールが捕らえられ、マルチデュプリケーター（表記がマルティからマルチに変わっている）で原型を取られてしまう。複製が作られ、尋問されたりあるいは三人の複製が大量に銀河に攻め込んだりすれば太陽系帝国の最期だ。ローダンは罠と疑いつつもデュプリケーター艦を追跡し行先の知れない状況転送機に≪クレストIII≫を飛び込ませる。
　ここしばらくテフローダーとテラナーの緊迫したやりとりが続いている。脇道にそれない展開はたいへんに好ましい。(1999.10.17)

　・悪魔の工場　クルト・マール

　・悪夢のデュプリケーター　ウィリアム・フォルツ

１３２巻「死者たちの侵攻」

　グッキー、トロト、ノワールのデュプロ原型を取ったデュプリケーター艦を追ってローダン一行は恒星ビッグブルーの惑星ヴァリオへとおびき寄せられた。２４０４年４月２６日、３４体のグッキーと３４体のノワールの複製が≪クレストIII≫を襲う。デュプリケーターは超能力はコピーできないんじゃなかったのかとか、ノワールの細胞活性装置はどうなったんだとか思うのだが、たぶん以前に使われたデュプリケーターよりも慎重に操作されたのだろう。
　これを撃退しデュプロ原型を破壊したのもつかの間、惑星ヴァリオの時間転送機が稼働し≪クレストIII≫は５万年の過去、自分の銀河に転送されてしまう。そこではハルト人とレムール帝国が激しい戦争をしていた。また島の王の時間エージェントがレムール帝国から資源を奪っていた。時間エージェントはローダン一行の正体を暴き、島の王に報告する。ローダンは島の王たちの新たな真実をつかみはしたが、過去からの脱出をまずは果たさねばならない。
　惑星ヴァリオで≪クレストIII≫が捕まったとんでもない量のエネルギーは、≪クレストIII≫を破壊するに十分だったのに、テフローダー司令はあえて一行を５万年の過去へと送り込んだ。これはその時点にレムールがハルト人向けの必殺兵器を用意しているためで、≪クレストIII≫がハルト人の船だとの誤解に基づく行動だった。しかしいくら状況を誤解していても、絶対確実なエネルギー兵器で捕らえておきながらあえて過去に送るような手間を掛けるかなあ。ヴァリオには捕らえる兵器はあっても破壊兵器は十分じゃなかったというあたりで納得する他はないかな。(1999.10.17)

　・不安の七時間　ウィリアム・フォルツ

　・死者たちの侵攻　Ｋ・Ｈ・シェール

１３３巻「ダラクの神殿」

　タム評議員の地位を持つ時間エージェントを排除したことからレムール人から逃げなくてはならないローダン。ログのはからいによって同じく過去に追放されたパドラーの修理ステーションＭＡ天才的を基地として確保することができた。しかし現在への鍵となる銀河六角転送機はレムール人により封鎖されている。
　意外なところで１０８巻で登場したドゥルと再会する。またいよいよ島の王が素顔をさらすことになった。
　今回は割と地味、とはいえストーリーと直結した展開。(1999.10.22)

　・時の目　Ｈ・Ｇ・エーヴェルス

　・ダラクの神殿　Ｈ・Ｇ・エーヴェルス

１３４巻「時空突撃班」

　テラナーのアンドロメダ侵入を知った島の王は、現在時間での銀河侵攻を企図しているに違いない。現在への連絡をつけるべくウールヴァ兄弟はタム評議員で時間エージェントのフラスブールのもとに侵入する。折から連絡を付けていた島の王レグナル＝オルトンを利用し、現在への帰還を果たす。
　レジナルド・ブルの指揮のもと、ローダンのもとへ新たに増援が送り込まれた。
　おいおい、いつのまに惑星ヴァリオでは接近する宇宙艦を見境無く過去に送り込むことになったのだ。マークス艦隊なんかその場で破壊してしまえよう。しかしそうなると偽装したオタマジャクシも過去へは戻れないのである。というわけでオタマジャクシＲ１０は無事（？）５万２千年の過去へと送られた。(1999.10.22)

　・現在への帰還　クルト・マール

　・時空突撃班　クラーク・ダールトン

１３５巻「時間ステーション急襲」

　テラナーの六角転送機利用を阻む時間エージェントのフラスブール。しかし彼はついにテラナーの手に落ちる。熾烈化するレムール艦の追跡。≪クレストIII≫とともに恒星レッドポイントに隠れていた修理ステーションＭＡ天才的は、あっけなく破壊され≪クレストIII≫は隠れ場所を失う。
　フラスブールの情報からローダンはヴェガに時間間転送機があることを知る。これにより現在へ帰還することはできないものの、５００年の相対未来へ移行することは可能だ。そうなれば、レムール／ハルト戦争は終わりレムールの追求を気にすることもない。≪クレストIII≫はヴェガ星系第六惑星へと向かう。
　ダールトン得意の時空を越えたお話として、ミュータント３人が時間の果てまで飛ばされエラートとハルノに宇宙の構造の説明を聞く。精神だけの存在が３人を誘惑する。レッドホースは太陽から出てきたエネルギー知性体と会話する。(1999.10.24)

　・時間エージェントを追って　クラーク・ダールトン

　・時間ステーション急襲　Ｋ・Ｈ・シェール

１３６巻「ネッター来襲」

　時間間転送機のあるヴェガ星系第六惑星。このジャングル惑星には恐るべき謎が秘められていた。ということで襲い来る原住民というかまあその。レーザー蛇とか思考する雲とか、エネルギー吸収植物とか。知性ある恐竜にコウモリ翼を持つ住民。ある種のＳＦということかも知れないけど、なんで占拠した敵性施設の回りはいつもそんななのか。
　オマール・ホークとバール・ルンのコンビの活躍がこの巻から始まる。(1999.10.24)

　・肉体なき者たちの世界　Ｈ・Ｇ・エーヴェルス

　・ネッター来襲　Ｈ・Ｇ・エーヴェルス

１３７巻「地下都市ゴドラー」

　ヴェガ時間間転送機の防衛戦。追いつめられたドン・レッドホース少佐他５名は物質転送機を使って避難する他無かった。着いた先は地球の転送機受け入れ部。待ち受けるテフローダー。レッドホース一行は危うく難を逃れ、島の王トセル＝バンと対決することになる。
　ハルト戦争から５００年後の地球の様子が描かれるが、まあそれだけ。トセル＝バンの攻撃をはねのけこれを倒した≪クレストIII≫一行の運命はいかに。
　しかし、ここにいたテフローダ及び島の王はいつの時間に属しているのか。単純には相対的５００年未来だから、現実時間でも５００年後に属していると思えるのだが、島の王はもうじきローダンにやられちゃうからこれは当てはまらない。そうなると相対的現在に属していると考えざるをえないが、そんな彼らがどうしてこの時にいるのか。紀元前４９４８８年が彼らにとってなんなのか納得のいかないところではある。(1999.10.26)
　島の王はテラナーの時間移動に気づいていたから、刺客として送り込んだのかな。そういう直接的な記述はなかったと思う。(1999.10.27)

　・地下都市ゴドラー　ウィリアム・フォルツ

　・火と氷のはざまにて　ウィリアム・フォルツ

１３８巻「時間の迷路」

　ペリーの身を心配する現在時間のモリー。５万年前の情報を求めようと虚空を旅する惑星バルコン訪問を思い立つ。なぜか現れるテフローダー。彼らの計略により惑星バルコンは消滅。惑星バルコンは銀河を目指した最後の試みであり、それ以外にも銀河を目指した別の集団があると示唆されている。
　ローダン支援のもう一つの試みとして、≪クレストIII≫用のカルプを積んだ≪ディノ３≫が５万年前に送り込まれる。今回はヴァリオに脅威を与え、時間転送以外にヴァリオを防衛する手段はないと思わせた上での移行。これならとりあえず筋は通っている。(1999.10.30)

　・バルコンへ飛ぶ　クラーク・ダールトン

　・時間の迷路　クルト・マール

１３９巻「レムリア秘密工作」

　５万年前に到着した≪ディノ３≫だが、ローダン一行はすでに５００年を移動していた。５００年の時を経て合流する≪クレストIII≫と≪ディノ３≫。これでハルト人に封鎖された六角転送機を使わずに≪クレストIII≫はアンドロメダに移動できる。
　時間の罠惑星ヴァリオの５万年前は、避難したレムール人たちによる新たな繁栄の中心惑星レムリアだった。高度な文明惑星で島の王を追い求めるローダン。惑星での冒険といえば未開惑星がほとんどということからは珍しい展開。
　アンドロメダへの途上でローダンはレムール人に追われ銀河へと避難していくマークスに遭遇する。このときからマークスは銀河に住むようになったのだ。おや、１３３巻（５００年前）ですでにマークスのいる惑星が銀河にあったぞ。彼らの歴史もまたレムール／テラナーに劣らない複雑なものなのであろう。(1999.10.30)

　・五次元からの指令　Ｋ・Ｈ・シェール

　・レムリア秘密工作　ウィリアム・フォルツ

１４０巻「時の征服者」

　現在時間に戻るため、惑星レムリアにいる島の王ネヴィス＝ラタンを誘拐・尋問・洗脳。ローダンの道徳規範が激しく試されるが、手を出してきたのは島の王である。３人目の島の王が生涯を終わる。誘拐・洗脳はミュータント部隊が担当。いざとなれば超能力さという展開はまあしかたがないか。計略により現在時間の時間転送機を作動させ≪クレストIII≫を現在へと戻すことに成功する。惑星ヴァリオは破壊。こうして島の王は大きく痛手を負う。島の王が７人（ネヴィス＝ラタンを含めて？）であることが判明する。
　ネヴィス＝ラタンはローダン一行を捕獲する目的であの時間にいたのだが、ローダンに先手を打たれてなんの策も講じられなかった。
　現在では島の王の地球工作が始まる。マルチデュプリケーターによる紙幣の大量コピーと、要人、将兵のデュプロによる組織切り崩しだ。舞台は一転してテラと銀河政治に切り替わる。(1999.11.1)

　・時の征服者　ウィリアム・フォルツ

　・宇宙探偵の介入　Ｈ・Ｇ・エーヴェルス

　初稿：1999.10.15、改訂：1999.10.17〜